著者:村上 龍
発行」幻冬舎
値段:1500円+税
久しぶりに読み応えのある本に遭いました。うれしい。
最初は55歳からのハローワークだと思いこんでいて、奇妙な感覚にとらわれました。きちんと読まなければいけません。
この本の読み応えは、なんといっても現実感があふれていることです。登場人物の気持ち、意識が前にどこかで感じた自分の思いと重なっているのです。5つの中編から構成されています。全編に流れているのはお茶(水分)。5つの作品の主人公の誰もがお茶を飲むことで心に落ち着きを取り戻し、バランスの取れた判断ができるようになっています。この点、うなずけるし面白い。お茶はいい。
また、5編の主人公は、その誰もが現実打開の努力を少しします。小説だからと読んでいると現実味が薄れますが、よくよく考えてみるとそのような打開は結構自分でもやっているのです、ということに気づかされる内容です。「なぜそんなことを」と聞かれても説明のしようのない自分なりの努力(現実打開のための)はあるのです。
読んでいる途中、作者の年齢が気になりました。どうしてこううまく55歳という年齢の意識をうまく表現できるのかということに興味が湧いたからです。なるほどとうなずける年代でした。
お勧めします。